「ファウスト」「若きウェルテルの悩み」「イタリア紀行」「詩と真実」などで知られるドイツの詩人ゲーテの言葉から、自分に役立ちそうなものを抜粋しております。気になった言葉や詳しい背景はご自身でお調べになることをおすすめします。
2016
『何をすることも、まとめることもできはしない。それだけの気力がなくなってしまっている』――ゲーテとの対話(上)より。
風邪を引いて以来、一向に体調の良くならないゲーテは上記のごとくぼやいた。
ためになる言葉というわけではないが、かの文豪にもやる気の出ない日があったり、何も手につかない日があったのだなと思うと親近感がわいてくる。と同時に健康の大切さも身に染みる。やる気があっても時間がなければ、時間があっても健康がなければ、健康でもやる気がなければ何も完成はしないのだ。
ゲーテには無関係だが、四つ葉のクローバーの葉はそれぞれ「名誉」「富」「愛」「健康」を意味していると聞く。人間はまず名誉を欲し、それに見合う富を欲し、満たされない己に気づいて愛を欲し、力衰えて健康を欲するという人生縮図が目に見えるかのようである。創作における四つ葉のクローバーは「才能」「時間」「愛」「健康」というところだろうか。時間は根気、愛は情熱と言い換えてもいいかもしれない。
風邪を引いて以来、一向に体調の良くならないゲーテは上記のごとくぼやいた。
ためになる言葉というわけではないが、かの文豪にもやる気の出ない日があったり、何も手につかない日があったのだなと思うと親近感がわいてくる。と同時に健康の大切さも身に染みる。やる気があっても時間がなければ、時間があっても健康がなければ、健康でもやる気がなければ何も完成はしないのだ。
ゲーテには無関係だが、四つ葉のクローバーの葉はそれぞれ「名誉」「富」「愛」「健康」を意味していると聞く。人間はまず名誉を欲し、それに見合う富を欲し、満たされない己に気づいて愛を欲し、力衰えて健康を欲するという人生縮図が目に見えるかのようである。創作における四つ葉のクローバーは「才能」「時間」「愛」「健康」というところだろうか。時間は根気、愛は情熱と言い換えてもいいかもしれない。
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2016
『詩はね、おなじ言葉というものでできている以上、また言葉を一つ付け足せば、他の言葉が死んでしまうのだ』――ゲーテとの対話(上)より。
これはゲーテの芸術的だが難解な詩に対して、エッカーマンが「書いた動機や注釈を入れて世間の人にもわかりやすくすればどうか」と提案したのに詩人が返した言葉である。それな、としか言いようがない。一つ言葉を入れ替えただけでも芋づる式の修正が始まるのは何故なのだろう。やはり文章というものが――特に詩という代物は――リズムと切っても切り離せない仲だからだろうか。
プロの脚本家は全ての台詞をきっちり音読するという。映像化を意識した作家・漫画家も登場人物の台詞は声に出しやすいかどうか検討するそうだ。詩ではなくても音読してみるというのは結構大事なことかもしれない。
ところでこの日のゲーテは風邪を引いていた。もう随分な高齢だし、咳き込むときに心臓を押さえるような仕草を見せるのでエッカーマンは詩など半分そっちのけで心配している。「ゲーテとの対話」には随所にこういった人間的な交わりが散りばめられており、心温まるのが良い。
これはゲーテの芸術的だが難解な詩に対して、エッカーマンが「書いた動機や注釈を入れて世間の人にもわかりやすくすればどうか」と提案したのに詩人が返した言葉である。それな、としか言いようがない。一つ言葉を入れ替えただけでも芋づる式の修正が始まるのは何故なのだろう。やはり文章というものが――特に詩という代物は――リズムと切っても切り離せない仲だからだろうか。
プロの脚本家は全ての台詞をきっちり音読するという。映像化を意識した作家・漫画家も登場人物の台詞は声に出しやすいかどうか検討するそうだ。詩ではなくても音読してみるというのは結構大事なことかもしれない。
ところでこの日のゲーテは風邪を引いていた。もう随分な高齢だし、咳き込むときに心臓を押さえるような仕草を見せるのでエッカーマンは詩など半分そっちのけで心配している。「ゲーテとの対話」には随所にこういった人間的な交わりが散りばめられており、心温まるのが良い。
2016
『誰でも旅行をするについては、何を見るべきか、何が自分に大切かを知っていなければならない』――ゲーテとの対話(上)より。
エッカーマンがゲーテのスイス紀行について、ゲーテがありとあらゆる事象――山脈の形態や位置、岩質、土壌、河川、雲、空気、風、気象、都市の成立の由来、歴史、建築、絵画、劇場、都市制度、行政、産業、経済、道路計画、人種、生活様式、習俗、政治や軍事――に目を向けていることを褒めたとき、ゲーテは「しかしね、音楽のことにはふれていないだろう。それは、音楽は私の領分ではないからなのだ」と答えた。旅行中、吸収するべきことの取捨選択をし、優先順位をつけていたことは間違いない。
こういった予習をするのとしないのとでは大違いだ。更に大切なのは、見たものや感じたことを書きとめておくことだと思う。
人間の記憶力には限界がある。何かいいこと、面白いことを聞いたという印象だけ覚えていて、肝心の内容は思い出せないということが私にはよくある。せめて観光旅行の記録くらいは、己の頭を過信せず、どこかに残しておくようにしたい。
ちなみにゲーテは、気に入った場所でスケッチを取り、画力の及ばない部分は空白にして文章で描写するということをしていた。これは結構いい方法なのではなかろうか。私の場合、デジカメのシャッターを切るだけだが、そこに二、三の言葉を付け加えるだけで更に多くの印象を留めておける気がする。
ゲーテの親友シラーは詩人から聞いたスイス旅行の話をもとに「ウィリアム・テル」を書いたという。ゲーテの細緻な自然描写にあやかりたいものだ。
エッカーマンがゲーテのスイス紀行について、ゲーテがありとあらゆる事象――山脈の形態や位置、岩質、土壌、河川、雲、空気、風、気象、都市の成立の由来、歴史、建築、絵画、劇場、都市制度、行政、産業、経済、道路計画、人種、生活様式、習俗、政治や軍事――に目を向けていることを褒めたとき、ゲーテは「しかしね、音楽のことにはふれていないだろう。それは、音楽は私の領分ではないからなのだ」と答えた。旅行中、吸収するべきことの取捨選択をし、優先順位をつけていたことは間違いない。
こういった予習をするのとしないのとでは大違いだ。更に大切なのは、見たものや感じたことを書きとめておくことだと思う。
人間の記憶力には限界がある。何かいいこと、面白いことを聞いたという印象だけ覚えていて、肝心の内容は思い出せないということが私にはよくある。せめて観光旅行の記録くらいは、己の頭を過信せず、どこかに残しておくようにしたい。
ちなみにゲーテは、気に入った場所でスケッチを取り、画力の及ばない部分は空白にして文章で描写するということをしていた。これは結構いい方法なのではなかろうか。私の場合、デジカメのシャッターを切るだけだが、そこに二、三の言葉を付け加えるだけで更に多くの印象を留めておける気がする。
ゲーテの親友シラーは詩人から聞いたスイス旅行の話をもとに「ウィリアム・テル」を書いたという。ゲーテの細緻な自然描写にあやかりたいものだ。
2016
『特殊なものを把握し描写するということが芸術本来の生命でもあるのだよ』――ゲーテとの対話(上)より。
一般的なものに留まっている限り、誰にでも真似されてしまうが、特殊なものではそうはいかない。他の人たちはそれを体験していないからだ、とゲーテは続ける。芸術作品が長く息を保つにはありきたりではいけないというわけだ。更にゲーテは、特殊なものは人の共鳴を呼ばないのではと恐れる必要はないとも語る。万物は回帰して、ただの一度しか世界に存在しなかったものはないし、どんな特異なものであっても普遍性を有しているからだ、と。個性的であると同時に普遍的であるということが長命な作品の要らしい。
ところで「特殊なものは人の共鳴を呼ばないのではと恐れる必要はない」に関してだが、これは本当にそう思う。創作界隈では他人の共感を得られないかもしれないことを異常に恐れる人がいるが、構想を聞いてみると「そんなに気にするほどか?」と首をかしげることが少なくない。仕上げてみたら当初考えていたものと全然違うものが生まれたというのもよくある話なのだし、そんなときは作ってから考えてみてもいいのではなかろうか。
なおゲーテは、個性的な描写には構成が深く関わっている、と発言している。が、エッカーマンはこの点についてあまり詳しく問うていない。甚だ残念である。
一般的なものに留まっている限り、誰にでも真似されてしまうが、特殊なものではそうはいかない。他の人たちはそれを体験していないからだ、とゲーテは続ける。芸術作品が長く息を保つにはありきたりではいけないというわけだ。更にゲーテは、特殊なものは人の共鳴を呼ばないのではと恐れる必要はないとも語る。万物は回帰して、ただの一度しか世界に存在しなかったものはないし、どんな特異なものであっても普遍性を有しているからだ、と。個性的であると同時に普遍的であるということが長命な作品の要らしい。
ところで「特殊なものは人の共鳴を呼ばないのではと恐れる必要はない」に関してだが、これは本当にそう思う。創作界隈では他人の共感を得られないかもしれないことを異常に恐れる人がいるが、構想を聞いてみると「そんなに気にするほどか?」と首をかしげることが少なくない。仕上げてみたら当初考えていたものと全然違うものが生まれたというのもよくある話なのだし、そんなときは作ってから考えてみてもいいのではなかろうか。
なおゲーテは、個性的な描写には構成が深く関わっている、と発言している。が、エッカーマンはこの点についてあまり詳しく問うていない。甚だ残念である。
2016
『しかし、彼らの多くには、軽妙な生き生きした描写の能力が欠けているよ。自分の力以上のことをやろうとばかりしてね。この点で、私は彼らのことを、無理をする才能と呼びたいのだ』――ゲーテとの対話(上)より。
ゲーテは「己の本領にとどまって能力以上のことに手を出さなければ良いものができる」と言う。力が足りていないうちは作品を完成させることよりも力をつけることを優先しなければならない、とそういう戒めであろう。
しかし取り組んでみなければ書けるか書けないかは案外実感できないものである。時には能力以上のものに手を出してみて、不足部分を知るのもいい勉強かもしれない。
ゲーテは「己の本領にとどまって能力以上のことに手を出さなければ良いものができる」と言う。力が足りていないうちは作品を完成させることよりも力をつけることを優先しなければならない、とそういう戒めであろう。
しかし取り組んでみなければ書けるか書けないかは案外実感できないものである。時には能力以上のものに手を出してみて、不足部分を知るのもいい勉強かもしれない。
プロフィール
HN:
湖原
性別:
非公開
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